2010年1月14日木曜日

同じ月






あれからもう15年くらい経つだろうか?
私はあるグラフィックデザイナーのグループに入りたくて、
シゴトが終わると、帰りにその事務所に頻繁に通っていた。


そこには先輩デザイナーが遅くまでシゴトをしていて、
私が行くと、いつもその手を止めてコーヒーを入れてくれた。
それから打合せテーブルに寄りかかるようにして、
広告のデザインがやりたい私の話を延々と聞いてくれた。
気がつくといつも午前0時を過ぎていた。
そして私が帰ろうとすると、また席に戻ってシゴトを始めていた。
私が何時間にもわたって話しても、
一向にソワソワ、イライラせずに聞いてもらっていたので、
シゴトもすぐ終わる量だと思い「まだシゴトあるんですか?」と聞くと、
「24ページ分のデザインが残っている」と言って
穏やかにマウスを動かし始めた。


今ちょうど私は、あの頃の先輩デザイナーの年齢になった。
パソコンも進化し、もの凄いスピードで作業が進んでいくのに、
なぜか皆、確実にあの頃よりも時間の余裕がない。
普段のシゴトの中でムダ話をするココロの余白がない。
余白のないデザインはテンションもなく息苦しいだけだ。
ほんの5分でも脱線してムダ話をすると、途端にもうソワソワし始め、
早くシゴトの話に戻りたいという雰囲気。
そしてケータイの呼び出しによってムダ話から救われるのだ。


考えてみると、あれだけケータイが鳴ると、
ムダ話どころかシゴトの話もおぼつかない。
何かすべての広告がコンビニ感覚でつくられているみたいだ。
自分もそうだが「アレもできます! コレもできます!! スグにできます!!!」
というほうがウケがよく、シゴトも集中する。
「文字のツメが...だから時間が」とか
「ビジュアルは本物にこだわって...だから予算が」とか
言っていると途端にシゴトを無くしてしまう。


さてそんな中、私はブログタイトルの「スロー広告」という言葉を掲げ、
その限られた時間の中で、これからどう広告に関わっていくのか?
時間は“長さ”ではなく、“ココロ”しだいで、同じ1時間でも
その“質”は変わってくるハズ。


同じ月を見上げて、美しいと思うのか、焦燥感にかられるのか...
“あの月”は、今も昔も全然変わってはいないのに。


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